大判例

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高松高等裁判所 昭和33年(う)22号 判決

(弁護人の)論旨は原判決が被告人に窃盗の犯意を認めたのは事実を誤認したものであるという。

しかし証拠を検討するに、被告人が本件シリンダー等を権利者の許諾がないのにその意思に反して無理に持つて帰りその所持を侵奪したものであることは明らかである。この点に関し被告人は原審公廷で「左様に持ち帰つたのは持ち帰つておけば先方が必ず話合に来てくれるものと信じ債権取立の方法としてやつたことであり一方的に換金する積りではなかつた」といつているが、被告人は司法警察員に対する昭和三十二年八月七日附供述調書で「車が来たときは森吾平さんの奥さんはもう顔を見せず二十才位の若衆が残つているだけであつた、私は森吾平さん方の母家の玄関先でその若衆にうちは品物を持つて帰らんとつらいので預つて帰るぞ、話に来てくれ、話の都合によつては品物を返して待つけにとに角話に来てくれといつた」旨供述している点、及び原審公廷で被告人が「このシリンダーは現在に至つては手形債権の代りにもらうつもりである」と供述している点並に極力拒絶するのにもかかわらず強いて実力をもつてその所持を奪い持ち去つた事実等から見ると、被告人が当時相手の承諾なく実力でその所持を奪つて品物を持ち帰り、相手が話に来て弁済の為の満足すべき話合が成立すればその品物を返還するが、相手が話に来なかつたり、来ても承知のできる程度の話でなかつたならばその品を抑留して返還せず結局最後にはその品物を手形債権の代りに取つてしまうという考えであつたことが看取されるのである。而してかかる意図の下に所持の侵奪を行つた以上は当時被告人に不法領得の意思がなかつたものとはいえないから原審がその判示事実を認定したのは相当であり原判決には事実の誤認はなく論旨は理由がない。

(裁判長判事 玉置寛太夫 判事 渡辺進 判事 安芸修)

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